人にとってチョコレートの5gや10gなどは、ものたりない量ですが、犬にとってチョコレートはただの甘くて美味しいおやつではありません。実は、チョコレートにはテオブロミンという成分が含まれています。テオブロミンなんて普段耳にすることのない言葉ですが、この成分は、犬にとって非常に毒性が高いもので、時には命を脅かすほどとても危険な成分です。
この記事では、犬がチョコレートを食べた場合の中毒や致死量、チョコレートを食べてしまった場合の対処法、中毒が出るまでの時間などについて詳しく調べて解説しています。愛犬を守るために、これらの重要な情報に目を通しておきましょう。
犬がチョコレートを食べるのは危険は本当?それともデマ?
犬がチョコレートを食べると危険なのは、デマではありません。主にはチョコレートに含まれる「テオブロミン」という化合物に危険性があります。テオブロミンはカカオ豆に含まれており、人間にとっては一般的に安全ですが、犬にとっては非常に有害です。
次のように獣医マニュアルにも危険性が報告されています。
獣医マニュアルによる犬のチョコレートの危険量
獣医マニュアルによりますと、以下のように報告されています。
カフェインとテオブロミンの致死量(LD 50)は両方とも 100 ~ 200 mg/kg であると報告されていますが、これよりはるかに低い用量でも重篤な兆候や死亡が発生する可能性があり、メチルキサンチンに対する感受性は個人(犬)によって異なります。一般に、20 mg/kg を摂取した犬では軽度の症状 (嘔吐、下痢、多飲) が見られる場合があり、40 ~ 50 mg/kg では心毒性作用が見られ、60 mg/kg 以上の用量では発作が起こる可能性があります。
メルクマニュアル
犬が食べてはいけないチョコレートの4つ危険性について確認しよう
1、犬はテオブロミンの分解が非常に遅い
犬は人間と比べてテオブロミンを代謝するのに必要な酵素の活性が低いため、人間よりもはるかに遅くこの化合物を分解します。これにより、体内にテオブロミンが長時間留まり、蓄積されることになります。
犬や猫の体は下に示したように、テオブロミンを摂取してから17.5時間経過しても50%しか排出されておらず、残り半分は体内に長く残ります。
犬ではテオブロミンを分解排泄する能力は17.5時間でやっと50%分解排泄すると言われています。 ヒトの場合の50%分解排泄までの時間は6時間と言われているので、犬や猫ではヒトよりもテオブロミンが体内に長く残ります。引用元:ライオン商事
テオブロミンが蓄積されることで、中枢神経系に作用し、興奮や不安を引き起こします。これが犬における過剰な興奮、不安、けいれんなどの症状につながります。
また、テオブロミンは心臓にも影響を与え、心拍数の増加や不整脈を引き起こすことがあります。これが心臓にストレスを与え、さらには心臓発作を引き起こす可能性もあります。また、テオブロミンは消化器系にも影響を与え、嘔吐や下痢などの消化器症状を引き起こすことがあります。
2、チョコレートのカフェインも犬には危険物質
カフェインもテオブロミンと同様に中枢神経系を刺激する作用があります。犬はカフェインを摂取すると、過度に興奮したり、不安を感じたりします。またカフェインは心拍数を増加させる可能性があり、これが犬にとっては特に危険です。特に心臓病を持つ犬や高齢の犬では、心臓に過度な負担をかけることになり、重大な健康問題を引き起こすことがあります。
2-1、カフェインも中毒症状を引き起こす
カフェインと言えば、コーヒーの成分として有名ですが、チョコレートにもカフェインは含まれています。このカフェインについても、犬は体重1kgあたり10mg以上の摂取で中毒を引き起こすことが知られています。
例えば、森永製菓のカカオ含有量70%の「カレ・ド・ショコラ」には、110mgのカフェインが含まれています。一箱86gですので、1/3の量であっても超小型犬においては危険量に該当します。
コーヒー以外にもカフェインが含まれている食品は、紅茶や緑茶、マテ茶などです。これらにもカフェインが含まれますので、危険な飲料として注意しましょう。
3、砂糖という糖分が含まれている
砂糖は犬が食べても中毒を引き起こすことはありませんので、与えてはいけない食品ではありませんが、特に効能がある食材ではないため与える必要のないものです。
4、レーズンやアルコールチョコなどもある
チョコレートには、レーズンチョコやナッツを混ぜたもの、アルコールを含んだものなどが市販されています。これらは、チョコの毒性に加えて、さらに中毒症状を発症を高める食材です。
こんなにたくさんある犬に危険なチョコレート類の食品情報
人がおやつとして食べるチョコレートが含まれてる食品を取り上げてみました。これだけ犬にとって危険性のある食品が身近にありますので注意しましょう。
犬がチョコレートを食べたときの対処法について知っておこう
チョコレートなど、犬が食べてはいけないものに手を出してしまうと、心臓がバクバクしてとても心配になります。この時にあわてて犬に漂白剤や塩を用いて吐かせる行為を行ってはいけません。
あなたにできることはすぐに獣医師に連絡することです。その理由としては、早い段階で胃内にあるチョコレートを除去することができれば摂取量によらず経過は良好となるからです。(乙訓どうぶつ病院)
迅速な対応が愛犬の命を救いますので、以下のステップに従って進めてください。
- 落ち着いて冷静になりましょう:まずは深呼吸をして冷静になり、犬の状態を観察しましょう。
- チョコレートの摂取量と種類を確認しましょう:愛犬が食べたチョコレートの量と種類を把握します。ダークチョコレートやハイカカオチョコレートはテオブロミン含量が高く、より危険です。
- 獣医師に連絡してください:獣医師に電話して、どのようなチョコレートをどれだけの量を食べたのか詳しく説明します。獣医師は摂取量や犬の体重を基に、どのような緊急対応が必要かアドバイスしてくれます。
- 獣医師の指示に従ってください:獣医師が診察を勧める場合は、直ちに犬を連れて行きます。獣医師は嘔吐させる処置や活性炭の投与など、適切な治療を行います。
- 症状がすぐには現れない場合もあるため、獣医師は摂取後数時間は犬の様子を注意深く観察し治療を続けてくれます。
犬がチョコレートを食べてから中毒症状がでるまでの時間についての確認
犬がチョコレートを食べた後に中毒症状が出るまでの時間は、犬の体重、摂取したチョコレートの種類、摂取量などによって異なります。一般的に、症状が出始めるのは以下の通りです。
症状が現れたら、すぐに獣医師に連絡し、犬を診てもらうことが大切です。症状の重さに応じて適切な治療が必要になります。また、犬がチョコレートを摂取したことが分かった場合、症状がまだ現れていなくても獣医師に相談することを勧めます。
チョコレート中毒の症状は嘔吐や下痢だけではない
留守中に愛犬がチョコレートを食べてしまうことはよくある事態です。もし帰宅して犬が次のような症状を示している場合は、チョコレート中毒の可能性が高いです。
獣医師によりますと、チョコレート中毒の目安として、犬の体重1kg当たりにテオブロミンを20mg摂取すると中毒症状が現れ、60mgで痙攣が起こり、100~200mgの摂取では死に至るリスクがあるとされています。
この情報を念頭に置いて、愛犬が不審な症状を示した場合は速やかに獣医師の診察を受けることが重要です。
- 消化器系の反応として嘔吐や下痢を起こす。
- テオブロミンの利尿作用により、過剰な水の飲用や頻尿が起こる。
- 犬が異常に活発になったり、落ち着きを失うことがあります。
- 神経系への影響により筋肉の震えがある。
- テオブロミンにより心拍数が上昇したり不整脈が生じることがある。
- 体温が異常に上昇する。
- 重度の中毒状態では発作が起こります。
- 非常に多い量のチョコレートを摂取した場合、命に関わります。
これらのいずれかの症状が見られる場合は、直ちに獣医師の診察を受けることが重要です。犬の命を守るためにも、迅速な対応が求められます。
市販チョコレートのテオブロミン量について確認しよう
市販のチョコレートに含まれるテオブロミンとカフェインの量に関する情報は、国民生活センターの資料などを参考にすることができます。これらの資料では、通常100gあたりのテオブロミンとカフェインの含有量が示されており、これをもとに摂取したチョコレートの種類と量に応じて、犬にとってのリスクを評価することが可能です。
販売会社名 | 商品名 | 内容量 | テオブロミン | カフェイン |
明治製菓(株) | チョコレート効果 板カカオ99% | 45g | 1100mg | 120mg |
森永製菓(株) | カレ・ド・ショコラ[カカオ70%] | 86g | 610mg | 110mg |
ロッテ(株) | カカオの恵み[カカオ72%] | 56g | 800mg | 84mg |
明治製菓(株) | 明治ミルクチョコレート | 50g | 250mg | 25mg |
森永製菓(株) | 森永ミルクチョコレート | 50g | 270mg | 36mg |
(株)ロッテ | ロッテガーナミルク | 50g | 220mg | 28mg |
市販のチョコレートの種類ごとに含まれるテオブロミンの量を1gあたりに換算すると、以下の量になります。
市販チョコレート1グラムあたりのテオブロミン量
これらの数値を参考にしますと、チョコレートの種類によって犬にとっての危険度は大きく異なることがわかります。ミルクチョコレートは比較的テオブロミン濃度が低いですが、ハイカカオチョコレートやココアパウダーははるかに高い濃度のテオブロミンを含んでいるため、犬に食べさせては非常に危険です。
チョコレート5グラムでも中毒になる犬について知っておこう
結論から言いますと、体重3kgの犬として、チワワやトイプードル、チン、ポメラニアン、ヨークシャー・テリア、カニヘンダックスフントが該当します。これらの犬種はハイカカオチョコレート5グラムでも中毒に値する量です。
チョコの種類 | 中毒になるグラム数 | 痙攣するグラム数 |
ミルクチョコレート | 10g | 25g |
ハイカカオ[カカオ70%] | 3.3g | 10g |
犬がチョコレート10グラム食べたときの症状について確認しよう
犬の体重1kg当たりにテオブロミン60mgで痙攣が起こります。カカオ70%以上のハイカカオチョコレートを10グラム食べたら、体重3kgの犬なら痙攣してしまうレベルの量です。5kgの犬でも中毒症状があらわれるレベルの量です。
チョコレートの致死量について把握しておこう
犬にとってのチョコレートで死亡してしまう量、つまり致死量ですが、犬の体重やチョコレートの種類によって変わります。特に、ダークチョコレートやハイカカオチョコレートなど、カカオ含有量が高いチョコレートは、テオブロミンとカフェイン量が多いため、少量でも犬にとっては致命的な量に該当します。
カカオ含有率が40%以上がダークチョコレートで、カカオマスの含有量が60%以上がハイカカオチョコレートになります。これらのチョコレートはカカオ含有量が高いため、テオブロミンとカフェインの濃度も高く、少量で死亡に達する可能性があります。
したがって、犬の体重が少ないほど、またカカオ含有量が高いチョコレートほど、より少ない量で重篤な中毒症状や死亡に至るリスクが高まります。
ペットの安全を守るためにも、チョコレート製品は犬の手の届かない場所に保管し、万が一の摂取を防ぐことが大切です。
獣医師が定めている「犬のチョコレートの致死量」
ミルクチョコレート、ハイカカオチョコレート、ココアパウダー別に計算できる犬が死亡してしまう量の計算フォームです。獣医師の見解によりますと、犬が死亡してしまうテオブロミン量は体重1kgあたり100mgから200mgとされていますので、平均して150mg/kgとし計算しています。
上の計算ツールから求めたのが犬の体重とチョコレート別の死亡してしまう量です。超小型犬ほど少ない量のチョコレートで死亡に達してしまいますので、十分な注意が必要です。
犬の体重 | ミルクチョコレート | ハイカカオチョコレート | ココアパウダー |
2 kg | 120 g | 38 g | 14 g |
3 kg | 180 g | 56 g | 21 g |
4 kg | 240 g | 75 g | 29 g |
5 kg | 300 g | 94 g | 36 g |
7 kg | 420 g | 131 g | 50 g |
10 kg | 600 g | 187 g | 71 g |
これらの計算値はあくまで一例であり、実際の状況では犬の体質や健康状態などにより異なります。このようなことが起きないよう、チョコレートの保管には十分注意してください。
バレンタイン後に犬のチョコレート誤飲事故が多くなるという情報
アニコム損保の報道によりますと、チョコレートによる誤飲事故が最も多く発生するのは2月で、これはバレンタインデーが大きな要因となっています。この時期にはチョコレートが広く出回り、以下のような状況で犬がチョコレートを食べてしまうことがあります。
このような事故を防ぐためには、チョコレートを犬の手の届かない場所に置く、犬のいる場所でチョコレートを食べない、家でのチョコレートの保管や摂取を禁止するなどの措置が必要です。
また、英国のリバプール大学獣医学教育病院が行った調査によると、2012年11月から2017年5月までに犬がチョコレートを摂取した1,722件の事例があり、そのうち386件がチョコレート中毒と断定されました。特にクリスマスとイースターの期間は、チョコレート中毒が多発することが明らかになっています。これは、これらの時期にチョコレートがより手に入りやすくなるためと考えられます。
犬の健康を守るためには、チョコレートを犬の届かない場所に保管し、誤飲を防ぐための注意が必要です。
まとめ
チョコレートに含まれるテオブロミンは、犬にとって非常に有害な成分です。犬はこの成分を効率よく分解できないため、体内に滞留し、中毒症状を引き起こします。
特に超小型犬は、10gくらいの少量のチョコレートでも危険です。たとえば、ハイカカオチョコレートの10gでは痙攣を引き起こすほどの量に達しますし、チョコ1枚では、致死量に達します。
日本では特に2月、バレンタインデーの時期にチョコレートの誤飲事故が多く発生します。この時期は市場にチョコレートが大量に出回り、家庭内での事故も増えるため、特に注意が必要です。
万が一、愛犬がチョコレートを食べてしまった場合は、すぐに動物病院に連絡し、指示に従って適切な対処を行ってください。チョコレートは人間にとってのおやつで美味しいものですが、犬にとっては毒に等しいため、絶対に食べさせないように注意しましょう。愛犬の健康と安全を守るためにも、チョコレートは犬の手の届かない場所に保管することが重要です。